「メリークリスマース!」  ドアを開けながらそう挨拶する。頭が引っかからないようにかがんで部屋に入ると、部屋の主が眉をひそめる。俺は荷物を置き、ベッドに腰を下ろす。 「リョウ君はいい子にしてたかなー。いい子にはプレゼントがあるよー」 「……シカに言われてもな」  リョウ君は俺の頭をちらりと見て、冷たく言い放つ。 「シカじゃないよ。赤鼻のルドルフだよ」  角だけじゃなくて、ちゃんと赤鼻も着けてきたのになあ。 「その角はヘラジカだろ。トナカイとはちょっと違うんじゃないか?」 「あれ、そうかあ。うーん、失敗失敗」  と言うわけで頭に着けていた角飾りを外す。赤鼻も。 「あと、こういうときは普通サンタルックで来るんじゃないか?」 「そのつもりだったんだけど、サイズが合うのがなかなか手に入らなくてさあ。今頼むとクリスマス以降になるって言われたから、仕方なくトナカイで……まあ、ヘラジカだったけどね」  身体が大きいとこういうときは損だなあ。普通の体型ならサンタ服なんていくらでも売ってるんだけど、俺みたいな巨体だとなかなか。帽子だけでも被ったら良かったかな。 「来年はちゃんとサンタ服で来るよ。それまでちゃんといい子にしてたらね」  俺のその言葉に、リョウ君はぷいとそっぽを向いてしまう。そうか、リョウ君はサンタ服が良かったのかあ。来年のクリスマスまでにはちゃんと大きなサイズのサンタ服を手に入れておかないとね。  さて、とりあえずはプレゼントを渡さないと。荷物から二つの箱を出し、両手にそれぞれ持つ。喜んでくれるといいなあ。 「どっちがいいかな? 好きな方を開けていいよ」 「二つもあるのか。どっちに何が入ってる、とかわからないのか?」 「俺自身も外からはわからないようにしたんだよ。両方ともリョウ君のために作ってもらったものだから、どっちが出ても喜んでもらえると嬉しいな」  どっちもいらないって言われたらどうしよう。その時は……その時に考えよう。 「ほらほら、早く選ばないとしまっちゃうぞー」 「う……じゃあそっちを」 「こっちだね。はい、プレゼントー」  リョウ君が指差した、左手に持っていた方を差し出す。箱の大きさもラッピングも同じだから、俺もどっちが入ってるのかはわからない。  箱を受け取ったリョウ君はまず色々な方向から眺め、少し箱を振ったりする。表情はぱっと見いつもと変わらないように思えるけど、俺の目からは少しわくわくしているように見える。 「……今開けてもいいのか?」 「うん、開けてみてよ。それでもしいらないようだったら、もう一個の方と変えてもいいから」 「よし、じゃあ、開けるぞ」  リョウ君はごくりと唾を飲み、箱のラッピングを丁寧に解いていく。中の白い箱を開けるとそこには…… 「あ、そっちか。何なのかは見てわかるよね?」 「あ……ああ。これ、もしかして……」 「と言うわけでプレゼントは『獣王・燃える鬣』のフィギュアでーす。あ、ガレージキットって言うのかな」  いつだったかにリョウ君がフィギュアを買っていた獣人キャラクター「レグルス」の、設定とかだけ存在する獣王バージョンだ。通常のレグルスとの違いは、タテガミが少し整えられていることと、マントが少しゴージャスになっていること、それと白い龍鱗のプロテクターを左胸と股間にだけ着けていることだ。まあ、そんなには変わってないかな。 「こんなもの、どうしたんだよ?」 「作ってもらったんだよ。こういうときだけは実家のコネをここぞとばかりに……まあ、そんな感じで」 「はああ……よくこんなのを……」 「ふふー。飾ってくれると嬉しいなあ」  どうやら喜んでもらえたようだ。早めに頼んでおいて良かった。 「こんなの、俺がもらっちまっていいのか?」 「言ったよね。リョウ君のために作ってもらったんだから、もらってくれないと困るんだよ」  俺も嫌いではないけど、うちに飾る場所はないし、リョウ君ほどにはこのキャラに対する愛着はないから勿体ないし。 「そ、それじゃあ、仕方ない、よな。その辺に飾って……いや、これはケースを買ってから……」  もうリョウ君はどこにどうやって飾るか考え始めてしまった。気に入ってくれたようで嬉しい。 「こっちもリョウ君のために作ってもらったんだけど、どうしようかなあ」 「何で俺なんかのために二つも用意したんだよ?」 「いやあ、そっちが今日までにできるか不安だったから、もう一つ別のものを頼んでおいたんだ。結局間に合ったからこういう形に。まあ、欲しかったらこっちもあげるよ。あ、こっちはプレゼント交換とかがいいかな」 「交換、できるものなんて、そんな……」 「大丈夫。リョウ君が自分でリボン結んで、『俺がプレゼント』って言ってくれればそれだけで」 「ばっ……そんなことできるか!」  想像しちゃったのかな。顔が赤くなってる。可愛いなあ。 「ふふふ。このプレゼントを見てもまだそんなことが言えるかなー?」  と、もう一つの箱を差し出す。こっちは実用的だから、きっと欲しがってくれるはず。 「開けろってことか?」 「うん。開けてみて開けてみて」  箱を受け取ったリョウ君は、やっぱり丁寧にラッピングを解き、箱を開ける。その中身を見てリョウ君は…… 「……修さん、あんたやっぱりバカなんじゃないのか?」 「あはは。リョウ君はそれが何か、見てわかるかな?」 「これ、わざわざ型取りしたのか? 修さんの……その、それを」  リョウ君が俺の股間をちらりと見る。やっぱり愛の力かな。見ただけで俺のと同じだってわかるなんて。  俺は箱の中のものを手に取る。大きなディルドだ。わざわざ俺の最大勃起時の型を取って作ってもらったのだ。もちろんリョウ君のために。 「そうだよ。リョウ君ならきっと有効に活用してくれると思って、作ってもらっちゃった」 「こんなもの、わざわざ作ってくるな、よな。俺がいつもそんなことばかりしてると思ったら……」 「なんだあ、いらないのか。残念。持って帰るかあ。俺が持っててもしょうがないんだけどなあ」  俺はわざとらしくそんなことを言って、ディルドを箱に戻す。フタを閉めたところで、リョウ君が視線を逸らして口を開いた。 「いらないなら、俺が欲……引き取ってもいい、ぞ。今更一本増えたところで、置き場所に困ったりもしないしな」  リョウ君は棚に並んだ何本もの大きさの違うディルドを見つめる。既にどう置くのか考えてるみたいだ。 「ふふ。じゃあ是非、引き取って欲しいな。あ、でも、これをちゃんと使える人に受け取って欲しいなあ」 「使える人、ってもしかして」 「試しにこれ、挿れてみてよ。入るかどうかちゃんと見てるから」  もちろん、俺のが入るんだからそのディルドだって入ると思うけどね。 「何でわざわざそんなこと……」 「嫌かな?」 「決まってるだろ。何で本物が目の前にあるのにわざわざ偽物なんて……」  その言葉を最後まで聞かずに、俺はリョウ君をベッドに引きずり倒し、唇を奪っていた。 「んっ……いきなり、何すんだよ」 「じゃあ本物で試そうか。俺のがちゃんと入って、それで気持ち良くなれたらこのディルド、受け取って欲しいな」  俺の言葉に、何も言わずにこくりと頷くリョウ君。もうリョウ君が可愛くてたまらない。とりあえず自分の服を上だけ脱いでから、リョウ君の服を脱がそうとボタンを……外そうとして断念する。少し考えて、言い訳のつもりじゃないけど思いついたことを口にした。 「そうだ、俺のをディルドだと思って自分で挿れてみてよ。ちゃんと自分で広げてさ。俺は動かないでいるから」  俺が仰向けに寝転がると、リョウ君は返事をしなかったけど自分から服を脱ぎ始めた。棚からローションとやや小さめのディルドを取り、まずは自分のお尻の穴にローションを塗りたくり、指を挿れる。普段から俺のを平気で呑み込んでいるそこは、指なんて簡単に入ってしまう。 「ふううっ……」  二本の指で少しかき混ぜるように動かし、広げる。それが気持ちいいのか、目を閉じて吐息を漏らす。充分に広がったのか、小さいディルドにローションを垂らしてお尻に挿れる。 「ああ、リョウ君……すごく、いやらしいよ」 「うう、うるせえ……はああっ……」  リョウ君がディルドを激しく動かし、ぐちゃぐちゃと音が響く。気持ちいいのか、物足りないのか、切なげな目で俺を見つめる。手を出したくなるけどまだ我慢だ。  やがてリョウ君はディルドを使いながら俺のズボンを下ろし、パンツも一緒に脱がせる。そして露わになった、ずっと前から勃起しっぱなしの俺のチンポに手を伸ばした。 「はああ、修さん……」  先端をかぷりとくわえ、口の中で舌を動かす。そうやって鈴口の辺りを刺激されるのがたまらなくて、また押し倒してしまいたくなる。そんな衝動を抑え、リョウ君の必死なフェラを堪能する。  舌が鈴口から裏筋、裏筋から亀頭のカサの裏を一周するように動く。それから口を離して根元のタマの近くから上に向かって舐め上げる。時々はむはむとサオの根元や真ん中辺りがくわえられ、やがてタマも一つずつ口に含まれる。俺のタマは大きくて、口に含むだけで少し苦しそうだ。だがその表情に苦痛の色はなくて、とてもいやらしい。 「ああ、リョウ君、気持ちいいよ……そのまま続けられると、それだけでイっちゃいそうだよ」 「う、ああ、わかった。じゃあそろそろ……」  口を離したリョウ君が俺のチンポを改めて見つめ、ごくりと唾を飲む。お尻に挿れていたディルドを抜くと、俺の上に跨った。俺のギンギンに勃起した、リョウ君の唾液に濡れたチンポを手で上に向けると、そこに腰を落としていく。 「ん、ぐうう……」  リョウ君の口からはきつそうな声が漏れる。いつものことながら、良く入るなあ。俺のがずぶずぶとめり込んでいって、奥まで呑み込まれてしまう。最初は少しきつくて、俺のチンポはぎゅうぎゅうに絞り上げられる。 「ほ、ほら。全部入ったぞ。修さんにやってもらわなくたってこのぐらいは……あああ……」  強がりを言いながら、俺の胸に手を突いて腰をくねくねと動かす。気持ちがいいのか、リョウ君の股間でも勃ちっぱなしのチンポが、滴を垂らしていた。そこに手を伸ばして触れると、リョウ君がびくんと身体を震わせる。 「うあ、それ、駄目だ、あああっ!」  ちょっと触っただけなのに、どぷどぷと汁を漏らすリョウ君のチンポ。調子に乗って、更に亀頭をくりくりといじってやると、俺の手首を掴んで必死で止めようとする。 「うう、動かないんじゃ、ねえのかよ……」 「あはは。ごめんごめん。つい、ね。でも、ちょっと触っただけでイっちゃったね」 「し、仕方ねえだろ! 修さんのチンポが、その……気持ちいい、から……」  その言葉の最後の方は声がかなり小さくなっていて、口にするのは恥ずかしそうだった。でもそれがたまらなく可愛くて、我慢できずに身体を起こし、キスをする。 「んっ……ぷはあ。もう動いてもいいよね。俺が手を出さなくても気持ち良くなれたみたいだし」 「……じゃあ、あのディルド……くれるのか?」 「ふふ。そんなに欲しかった?」  と聞くと、ぷいと顔を背けてしまう。その顔は真っ赤で、言葉を口にしなくても全てを物語っていた。俺はもうたまらなくて、リョウ君の腰をがっしりと掴んで激しく突き上げ、中をかき混ぜるように動いた。リョウ君は俺に必死でしがみつき、タテガミに顔を埋めた。  あんなにきつかったリョウ君のケツマンコが、トロトロに絡みついてくる。俺のチンポもとろけてしまいそうで、もう途中で止まることはできそうになかった。 「ああ、リョウ君のお尻、すごく気持ちいいよ。俺もう、イっちゃいそうだ。リョウ君の中にたっぷり出しちゃうよ」 「ぐうう、出すんなら、ああ、早くしろよ! 俺、もうこれ以上は……」 「はあ、あああ、出るっ!」  リョウ君の奥までねじ込んだチンポから、大量のザーメンを注ぎ込む。リョウ君も痛いぐらいに俺の身体にしがみつき、身体を大きく震わせた。  二人ともしばらく動けずにいた。それぐらい、気持ちが良かった。やっぱりリョウ君とのセックスはたまらない。相性がいいんだろうなあ。  ぐったりしたリョウ君の身体をベッドに横たえ、吐き出した汁でドロドロになった身体を綺麗に拭く。俺の方も後始末を済ませ、服を着てから思い出す。  持ってきた荷物から、それをテーブルに置く。電気ポットのお湯の残量を確認してから、コーヒーの準備。お揃いのカップを並べ、俺の方は砂糖とミルクも準備しておく。 「リョウ君、ケーキ食べようよ。作ってきたんだよ」 「ああ……」  まだぼんやりとした表情のリョウ君が身体を起こし、服を着直す。まだぼうっとしてるみたいだから、軽くキスをしてやる。それで少し頭がはっきりしたようだ。 「ケーキ……え、わざわざ作ってきたのか?」 「そうだよ。実家の方で手作りするって言うから、俺も一緒に作ったんだよ。ほら、イチゴもたっぷり」  あらかじめ切っておいたケーキを皿に載せ、リョウ君に差し出す。作ってきたのは王道のストロベリーショートケーキだ。自分の分も皿に取り、フォークで一口、口に運ぶ。うん、悪くない。俺が食べるのを見てから、リョウ君もケーキを口にする。表情からすると、それなりに気に入ってもらえたようだ。 「あ、クリームがついてるよ」  そう言って、舌を伸ばしてリョウ君の口の横をぺろりと舐めた。ただそれだけで、リョウ君は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。さっきまであんなに恥ずかしいところを見せてくれたのに。まあ、クリームついてなかったけどね。  二人でケーキを食べてから、ベッドに転がってしばらく他愛もない話をした。セックスも好きだけど、こういう時間も大好きだ。リョウ君もきっとそう思ってくれてるはず。時間はあっという間に過ぎ去って、もう帰らなくちゃならない時間になった。 「もう少し一緒にいたいけど、そろそろ帰るよ。またね」 「ああ、じゃあ……あ、ちょっと待ってくれ」 「ん? どうかした?」  立ち上がった俺を引き留め、リョウ君は何か包みを手渡してきた。綺麗な包み紙で、不器用にラッピングされたそれは。 「もしかして、俺にプレゼントしてくれるのかな?」 「そ、そんな大したものじゃねえからな。開けて、いいぞ」 「ふふ。何かなあ」  不器用なラッピングを丁寧に解くと、中に入っていたのは……手袋だった。試しにはめてみると、俺の無駄にデカい手に丁度良いサイズだった。 「ピッタリだ。すごく嬉しいよ。大事に使わせてもらうからね」  こんなサイズよく手に入ったなあ。大切にしよう。爪を立てて穴を開けるなんてことにならないようにしないとね。 「……メリー、クリスマス」  リョウ君が恥ずかしそうに小さい声でぼそりとそう言ったのを、俺の耳は聞き逃さなかった。だから俺も、帰る前にリョウ君の身体を抱き締め、耳元で囁いた。 「メリークリスマス」 「痛えよ」 「あはは。ごめんね」  来年はちゃんと、サンタクロースの格好で来られるといいなあ。