「カボチャメニューが増えたな」  行きつけの洋食屋にて、仕事帰りに先輩の裕(ユタカ)さんと二人で夕食。  注文を終えると、メニューを閉じながら裕さんがぽつりと。とりあえず反応しておく。 「もうすぐハロウィンですからねー」 「最近はどこの店も安易に乗っかりやがる」 「でも裕さんもカボチャのスープ頼んでましたよね?」 「そりゃ頼むさ。だってよう、今カボチャメニューを頼むとカボチャクッキーがもらえるんだぞ。こういうの見ると特別好きじゃなくても欲しくなるよな」 「なりますねえ」  俺も何かカボチャ系頼めば良かったかなあ。後でデザートにカボチャプリンでも追加しようかな。料理が運ばれてきたら店員さんに頼んじゃおう。 「ところで……ハロウィンってコスプレとかするんだろ?」 「みたいですね。今は何でもアリな感じになってますけど、元々はお化けとか怪物とか、恐いモチーフの扮装を。なんか魔除けみたいな意味があるとかないとか」 「怪物のコスプレなら、お前はそのままでもそれっぽいよな。童話にでも出てきそうだし」 「あはは。呪われてこんな姿に、って言うのも童話の定番ですからなおさらそれっぽいですね」  事情により呪われてしまった俺は、いくつかの動物を混ぜたような姿をしている。牛のような角に、ライオンのようなタテガミ。尻尾は虎縞がある上にライオンのような房が先端にある。虎縞は背中にもあったりする。体型とかは少し熊っぽいと言われたりもする。  こんな見た目だから、ハロウィン当日は、気を付けないとコスプレ集団の一員と思われそうだ。テレビ局にインタビューされちゃったりして。  それから少し他愛のない話をしていたら、裕さんの頼んだハンバーグプレートが運ばれてきた。俺の頼んだふわふわたまごのオムライス(特製トマトソースの方)はまだかなー。 「とりっくおあとりーとー」  部屋に入るなりそんな言葉を口にした俺を、リョウ君は椅子に座ったまま冷ややかな目で見つめる。 「……修(シュウ)さん。いつもと同じに見えるんだが、今日は何かのコスプレのつもりなのか?」 「えーと、呪われた王子様、みたいな?」  童話でそんな設定の話があったような気がする。あんまりちゃんと読んだことないけど。 「それだったら、それっぽい衣装じゃなくてもせめてもっといい服着てくるとかしようぜ。いつも通り過ぎるだろ」  残念ながら着ている服はいつも通りのビジネススーツ。まあ、仕事帰りだからね。 「えーと、じゃあ王子様は呪いでサラリーマンになってしまいましたー」 「そっちかよ」 「あはは。冗談冗談。この体格だと急に思いついても衣装は用意できなくてさあ」  こういうときはこの大きな身体は不便だ。パーティグッズとして普通に売ってるのはなかなかサイズが合わないから、とっさに用意できる服なんて限られてしまう。このスーツだってわざわざ仕立ててもらったものだし。普通のカジュアルウェアとかなら売ってる店があるんだけどね。 「来年は衣装を早めに用意しておくよ。どんな格好が好きかな?」 「そんなこと言われても……俺は別に、いつも通りの修さんで……」 「そうだよね。どうせすぐ脱いじゃうもんねー。リョウ君はえっちだなあ」 「な……そう言う意味じゃ……」  まあ、分かってるんだけどね。リョウ君は俺のスーツ姿を結構気に入ってくれてるみたい。リョウ君がネットに投稿してるイラストの中にもスーツ姿の俺をモデルにした絵が何枚かある。参考資料にと写真も撮られたし。 「来年は逆に、リョウ君に何か衣装を用意しちゃおうかなあ。そうしたら着てくれるかな?」 「……修さんが、どうしてもって言うなら」 「うーん、どうしても着て欲しいかって言われるとねー。俺もいつも通りのリョウ君で満足してるからなあ」  リョウ君は仕事もこの部屋の中でやってしまうからこのフロアから降りることが少ない。そのためか服装は普通の普段着みたいなのが多い。以前は前あきのシャツを着ていることが多かったけど、最近はスウェットみたいなのが多い。多分、俺に合わせてくれてるんだと思う。俺が興奮すると、服のボタンを外すのに手間取るから。そもそも指が太いし、興奮すると力の加減がなかなか難しくなっちゃってね。引きちぎらないようにしようとするとなかなか難しい。 「あ、でもリョウ君がえっちな衣装で俺を悩殺してくれるならそれは大歓迎だよ」 「ば……バカじゃねえの、修さん」 「コスプレが恥ずかしかったら、えっちな下着でもいいよ。スケスケなのとか、ヒモみたいなのとかで悩殺してくれないかなー」  今度色々買ってきちゃおうかなあ。でもそんなの穿いてるところ見ちゃったら、我慢できなくなっちゃいそう……なんてことを色々考えていたら。 「もう目的変わってるじゃねえか。ハロウィンはどこ行ったんだよ」  あ、そうだった。ハロウィンの話だったっけ。とりあえず改めて、決まり文句から入っておく。 「えーと。とりっくおあとりーとー」 「またそれか。菓子なんて都合良く用意してないぞ。こんなものでも良ければいいけどよ」  と、リョウ君が差し出したのはちょっとした食事代わりの、栄養を調整したケーキバー。美味しそうだけど今は別に欲しくない。 「ああ、お菓子はこっちて用意してあるからそうじゃなくて、お菓子とイタズラ、どっちが欲しい?」 「修さんがもらうんじゃなくてくれるのか。でもイタズラって欲しがるものなのか? 菓子とどっちか選んでまで?」 「ふふー。ただのイタズラじゃないよー。リョウ君が興奮しちゃう、えっちで楽しいイタズラだよ。いつもよりいっぱい感じちゃうかもね。リョウ君は、されたくない? えっちなイタズラ」 「うっ……」  何を想像してるのか、リョウ君の顔が少し赤くなる。うつむいて、少し顔を背けながら、ばそりと答える。 「ちょっとだけ、されたい……かも知れない」 「よーし。じゃあイタズラしちゃうぞー。あ、でも折角作ってきたからお菓子は後で食べようか。ほら」  持ってきた手作りのお菓子の入ったタッパーをとりあえずテーブルに置く。リョウ君はそれを手に取り、開けてみて眉をひそめる。 「何でようかんなんだよ」 「実家に行ったら丁度かぼちゃと小豆があったから、二色かんにしてみたんだけど、ようかん嫌いだった?」 「いや、嫌いじゃねえけど……なんか、ハロウィンって言うより冬至っぽくないか?」 「あはは。そうかも」 「なあ、本当に……これで行くのか?」  駐車場に停めた車を降りようとしたら、助手席のリョウ君が不安そうに聞いてきた。リョウ君の服装はコスプレでも何でもない、普通の前あきシャツにジーンズ。坊主頭にはキャップを目深に被っている筋肉も脂肪もそこそこ付いたむっちりとした体型は、俺と違って特別目立つようなこともない。 「行くよー。イタズラされたいって言っちゃったよね? そんなに人の多いところは行かないから大丈夫だよ。それに、みんなの視線はどちらかというと俺の方に向かうから、リョウ君のことはそんなに気にされないと思うよ」 「うう……絶対、離れないでくれよ」 「はいはい。じゃあ行こうか」  車から降りて、助手席のドアを開ける。リョウ君の手を引いて車から降ろし、鍵を閉める。 「行く場所って決まってるのか?」 「一応決めてあるけど、別に予約とかしてるわけじゃないからね。どこか行きたいところある?」 「いや、修さんとならどこでも……と言いたいところだけど、今日はなるべく人のいないところがいい……」 「はいはい。あんまり人が多いようなら別の場所に行くよ。それでいいね?」  俺の言葉に、こくりとうなずくリョウ君。その姿を見ながら俺は、空いた左手をポケットに突っ込んで、そのスイッチを入れる。 「んっ……」  リョウ君は身体をびくんと震わせて、俺の腕にぎゅっとしがみつく。帽子のつばのせいで表情はよくわからないのが残念だ。 「あれー。リョウ君、どうしたのかな? 具合でも悪い?」  わざとらしく聞いてやると、リョウ君は俺を恨めしそうに見上げる。既に顔は赤くなっていて、ちょっと恥ずかしそうだ。 「ううう……そういうのじゃ、なくて……」 「じゃあどうしたのか言ってごらん? 何がどうなってるのかな?」 「……俺の、ケツに……その、オモチャが、入ってるから……」 「入ってると、どうなっちゃうの?」 「気持ち……良く、なっちまう、からっ! ああ、修さん……」  刺激に耐え、頑張って今の状態を説明してくれるリョウ君。そう。今リョウ君のお尻にはプラグ状のアナルバイブが入っている。しかもリモコン式で、バイブ本体にはスイッチがない。俺の手元にあるこのリモコンで、オンオフや振動の強弱を調整できる。今は弱い振動のはずだけど、リョウ君は既にまともに歩けそうにない。  ここで終わってしまっては勿体ない。とりあえず一旦スイッチを切ると、リョウ君は俺にしがみついたまま呼吸を整え、落ち着いてからすがるような目で俺を見る。 「修さん、俺、こんなの無理だ……」 「どうして?」 「……途中で、漏らしちまうかも」 「着けてるゴムだけじゃ駄目そう?」 「わかんねえ……修さんの突っ込まれてる時みたいになっちまったら駄目かも……」  うーん、リョウ君は俺に掘られてるとき、よく潮噴いちゃうんだよねえ。途中で漏らしちゃったら大変だ。 「じゃあ漏らしそうになったらちゃんと言ってね。ゴムが外れてズボンがびっしょり、なんてことにはならないようにするからさ。だから頑張ってみようよ」 「ああ……分かった。じゃあ何とか、早めに伝えるようにする」  納得してくれたようなので、手をつないで歩き出す。リョウ君はちらほらと通る人を気にして、歩きながらちらちらと周りを見る。引き籠もり(会社にね)のリョウ君は、俺が連れ出さないとほとんど外に出ないので、一緒に歩くときは大体こんな感じだ。  とりあえず向かったのは、以前リョウ君とも来たことのあるゲームセンター。お店に着くと、リョウ君は俺の顔を伺いながら周囲を見回す。リョウ君はゲームは結構好きなんだけど、引き籠もりだからなかなかここまでは来ないみたい。  一階はプライズゲームやプリントシール機なんかの、ライト層向けの筐体が中心なので、とりあえず別のフロアに行く。 「ねえ、これだったら対戦できるかな?」  俺が指差したのは、二台が向かい合った対戦型の筐体。リョウ君のお気に入りのキャラクター、ライオン型獣人のレグルスが出てくる格闘ゲームだ。現在稼働しているのは、レグルスがその名前をもらう前、獣王の庭というところで戦っていた頃の話をモチーフにした、いわゆる過去編というやつだ。だから名前もレグルスではなくモエルタテガミという表記で、出てくるキャラクターもみんな独特の響きの名前を持った獣人のキャラクター達だ。 「それなら、俺でも何とか。修さんはできるのか?」 「ふっふっふー。格闘ゲームは結構やってるからねー。はい小銭」  用意して置いた小銭をリョウ君に何枚か渡して、リョウ君と向かい合った席に着く。コインを入れてスタート。リョウ君が選んだのは案の定、お気に入りのレグルスことモエルタテガミ。俺は……限定的だが雷を操る能力がある、ソラヲキリサクという熊型獣人のキャラクター。万能型のレグルスと比べると、動きは遅いし飛び道具も癖があるキャラクターだ。  試合が始まると、リョウ君は盾を飛ばす技で牽制しながら、こちらの隙を突いて綺麗にコンボを決める。こちらが守りを固めるとガードを揺さぶり、ガードできない投げ技なんかも混ぜてくる。教科書通りの丁寧なプレイスタイル、という感じだ。  もちろんこちらもやられっぱなしではない。ガード硬直を減らす直前ガードから発生の早い技で割り込んだり、強力なコマンド投げを決めたりして体力を削っていく。画面下のゲージが溜まったところで、それを消費する強力な必殺技……これもコマンド投げで、抱きかかえた相手に雷を落とす技を決める。が、ギリギリダメージが足りず、倒しきれなかった。  あと少しだからと適当な技を放ったところを、モエルタテガミのゲージ消費技、剣で相手の攻撃をいなしつつ強力な反撃をするカウンター技を喰らってしまい、あえなく敗北。続く二ラウンド目は何とか俺が勝ったけど、三ラウンド目でまた俺の負け。二本先取なのでリョウ君の勝ちだ。  俺が席を立ったら、別の知らない人がその席に座り、リョウ君に対戦を挑んだ。その人の使用キャラはタイキヲコガスという名前の虎型獣人。炎を操る能力を持っている、飛び道具主体のキャラクターで……ゲームにおいてはモエルタテガミに対して有利。リョウ君は頑張ったけど残念ながら敗北。でもリョウ君は満足そうに席を立った。 「残念だったね。でもリョウ君、結構上手いんだねえ」 「まあ、家庭用のネット対戦なら結構やってたからな……でも途中、修さんが邪魔してくるんじゃないかって心配で……その、スイッチ入れたりとか」 「あ、これ?」  リモコンを操作して、一瞬だけ振動をオンにすると、リョウ君が身体をぴくんと震わせた。 「そっちに意識が向かわなかったなあ。スイッチ入れた方が良かったかな?」 「いや、そんなわけじゃ……」 「次はちゃんとスイッチ入れるようにするよ。何かやりたいゲームとかある?」  この店はこの辺りでは一番大きなゲームセンターで、今人気のゲームは一通り揃っている。以前来たときにリョウ君が他にやってたのは……音楽ゲームとかかな。  というわけで音楽ゲームが並んでいるフロア。丁度空いていた、曲に合わせてたくさん並んでいるボタンを叩くゲームの筐体へ。 「ねえ、これだったらリョウ君、どのぐらいできるのかな?」 「まあ……最高難易度の何曲か以外なら、クリアだけなら一通りは」 「じゃあさ、簡単なのでいいから、このままやってみてよ」  そう言って、リモコンでスイッチを入れる。リョウ君は周囲を気にしながら、刺激に身体をくねらせる。 「無理だっ……こんな状態じゃ……」 「試してみてよ。もしクリアできたらあとで何かご褒美あげるから。ね、お願い」 「うう……分かった……」  リョウ君は渋々俺の言うことを聞いてくれて、筐体にコインを入れる。もじもじと動きながら曲を選び、スタートする。簡単なのでいいって言ったのに、難易度はそこそこ。もしかして、リョウ君の基準ではこれで簡単なのかも。  弱い振動のまま変えずにいたら、最初こそいくつかミスをしたものの、やがて刺激に慣れてきたのか途中からは調子が良くなっていった。一曲目はあっさりクリア。というわけで二曲目の時には時々振動を強くしたり、少しだけ止めてみたりして緩急を付ける。すると少しミスが目立つようになった。それでも、元々の腕前のおかげか何とかクリアー。さて、最後の三曲目は…… 「んっ……」  バイブの振動を最強にしたら、リョウ君がわずかに声を漏らした。ボタンを叩きながらもじもじくねくね。周りの人からはトイレに行きたいのかなー、とでも思われてるんじゃないかと思う。  三曲目が終わり、結果が表示された。得点は高くなかったけど、三曲目もギリギリクリア。三曲で終わりなのでゲームオーバーの表示が出たところで、慌てた様子で俺の方を見る。 「修さん、やばい、このままだと……」  あ、もしかして漏れそうなのかな。よし。 「じゃあ急いでトイレ行こうか」  スイッチは切らずに弱にして、リョウ君を抱え上げて男子トイレへ急ぐ。小便器の前に立たせ、ズボンのファスナーを降ろしてリョウ君のチンポを引っ張り出す。かぶせていたコンドームをはぎ取り、先端を便器に向けた。そして再び振動を最強にすると…… 「ああ、駄目だ、漏れちまう、ああああっ!」  便器に向けて、リョウ君のチンポは透明な液体を大量にまき散らす。その間、膝はがくがくと震えていて、俺に支えられていないと立っていられない状態だった。液体の噴出はしばらく続いていたが、やがて何も出なくなり、ただびくびくと身体を震わせるだけになったのでスイッチを切ってやる。ティッシュでチンポを軽く拭ってから、また新しくコンドームをかぶせてやる。パンツの中にしまってファスナーを上げてやってから、リョウ君の身体を後ろからぎゅっと抱きしめる。 「本当にオモチャの刺激だけで潮噴いちゃったね。リョウ君が感じてるところ、すごく可愛かったよ」 「はああ、修さん……」  そのままリョウ君の呼吸が落ち着くのを待ってから、トイレから出る。一階まで戻ってきて、プライズゲームを見て回る。その中に、それを発見した。 「あ、これ取ってあげるよ」  筐体のアームを動かし、目的の景品を無理して一回で取ろうとはせずにちょっとずつ動かしたりして、何とか四回目でゲット。出てきた景品をリョウ君に手渡すと、少しだけ嬉しそうな顔になった。結構喜んでくれているみたい。 「これ、欲しくてネットオークションででも探そうかと思ってたんだ……ありがとう、修さん」 「あ、そうだったんだ」  モエルタテガミことレグルスのデフォルメぬいぐるみ。取ったのはいいけど結構大きいなあ。エコバッグみたいなのは持ってるけど、ちょっと入らないみたい。だからと言ってこのまま持って歩くのはちょっとね。というわけで店員さんに聞いたら、大きなビニール袋をくれた。プライズゲームに大きな景品も多いから、用意してくれているみたい。 「持って行けるならもう少し頑張っちゃおうかなー」  店内を見回し、更に別の景品を見つける。今度は二回目でゲット。リョウ君に手渡そうとして……気付く。 「あれ、これちょっと違ったみたい。ライオンマスクのプロレスラー、獣王バーニングレオさんだね」  レグルスのフィギュアだと思って取ったんだけど、よく見たら似てるけど違うモノだった。 「ああ、レオさんか。前がきついフィギュアってのならうちに一つあるけど、それとちょっと違うんだな。こんな派手な服装じゃなかったし……もう少し、モッコリしてた」 「こっちは入場のときのコスチュームだね。試合開始前にはこのマントとか脱ぐんだよ。前がきつい、ってのは多分、試合後のパフォーマンスの時のだね。この人、試合が終わったら相手とショートタイツ……このパンツを相手と交換して、『前がきついな』って言うのが定番で」  試合を見に行ったことはあるけど、本当に脱いで履き替えるんだよね。脱ぐときは周りの人が隠そうとするんだけど、レオさんはお構いなしなので客席から見えてしまう。試合直後のレオさんは何故か勃起してることが多いみたいで、あの大きなチンポでは他の人のタイツとかはちょっときついんだろう。主に前が。 「前がきついってそういうことだったのか……よく知らないで懸賞に応募したら当たっちまって。そうか、プロレスラーだったんだな……いつもこういうのを被ってるのか?」 「うん。すごいよくできたマスクで、喋るときとか、食事の時とか口がちゃんと動いてて……」  あれ? 今まで深く考えてなかったけど、それって…… 「なあ、もしかしてそれ、修さんとかみたいなヤツなんじゃないか? マスクじゃなくて」 「そうかも。次に会ったときにでも聞いてみるよ」 「え? 知り合いなのか?」 「レオさん個人と特別交流があるわけじゃないけど、実家の関係でね」  実家のおかげ(?)で色んな業界、色んな人と交流があったりなかったり。リョウ君も引きこもってさえいなければそういうの結構あったんじゃないかなあ。 「どうしても会いたいのなら、会えないこともないけど」 「いや、それはいいよ……俺、そもそも実在のプロレスラーだってことすら知らなかったんだぞ」 「あはは。そうだっけね。折角だから今度、レオさんの試合一緒に観に行こうよ。この近くの会場でやることもあるからさ」 「ああ……考えとく」  フィギュアもいいけど、動いてる本物は凄く格好良いから、是非観て欲しいなあ。  その後、更にもう少しプライズゲームを見て回り、レグルスの使ってる盾を模したフリスビーをゲットして、リョウ君を微妙な気持ちにさせてから店を出た。うーん、フリスビー楽しいのになあ。  ゲームセンターを出てから少し歩き、時々リモコンバイブのスイッチを入れたりしながら二つ目の目的地に着く。雑居ビルの位置フロアにあるこの店は、SFと言う名前のゲイショップだ。  店内には、他のゲイショップではあまり見かけない商品が並んでいる。多分輸入品に日本語の説明書きを着けてるんだと思う。 「リョウ君はこういう店、来たことある?」 「い、いや……買うのはいつも、ネット通販だったから……」  リョウ君はディルドとか色々持ってたっけね。あれは全部通販かあ。ローションとかもなくなったら通販かな。 「こういう店は実際に来ると色々あって面白いよ。興味なかった商品でも実際に見てみるとちょっと欲しくなったりするし。ほら、こういうの着けてみたくない?」  SM系のグッズの中から、首輪とリードを手に取る。冗談のつもりだったんだけど、リョウ君は興味なくもなさそうだった。俺から首輪を受け取ると、自分の首にあてがってみたりする。使ってるところを想像してるのかな。それなら…… 「ほら、こういうのもあるよ。一緒に使って散歩とかいいかもね」  イロモノ系なグッズの中から、尻尾付きのアナルプラグを見つけた。色んな動物の尻尾があるけど、首輪と一緒に使うなら犬の尻尾だよね。この柴犬みたいなのがいいかなー、なんて。 「ほ、本当に、これ着けて散歩、するのか?」 「あはは。楽しそうだけどさすがにちょっとね。首輪着けて散歩はその辺の道や公園でするわけにいかないからさ」 「そう、だよな……」  あ、なんかがっかりしてる。でも本当にやる場所ないからなあ。ハッテン場になってる公園ならできなくもないだろうけど、リョウ君をそう言う場所に連れて行くのはまだ早い。 「代わりにこういうので遊ぼうね」  代わりにリモコンでバイブのスイッチを入れる。いきなり強い刺激を加えられて、リョウ君はしゃがみ込んでしまった。 「くううっ……」 「あれー、どうしたのかなー、リョウ君」  俺はわざとらしく近付いて、頭に手を置きつつ目の前に俺の股間が来る位置に立つ。リョウ君は口を少し開けて、吸い寄せられるように盛り上がった俺の股間に……かぶりつきかけたところで、リョウ君の視線が横に動き、固まる。 「ん、どうした。続けていいぞ。俺は見てるけどな」  店主がすぐ近くから見ていた。角を含めた俺の身長ぐらいはある大男で、顔立ちは日本人じゃあなさそうな感じ。リョウ君は俺の陰に隠れるように、脚にしがみつく。とりあえずバイブのスイッチは切っておこう。 「すみません。さすがにちょっと恥ずかしいみたいです。俺は見られてもいいんですけどねー」 「俺一人に見られてるだけで何にもできなくなるんじゃ、首輪着けて散歩なんて無理だな。見られてると興奮するぐらいじゃねえとな」  うーん、素質はあるんだろうけど、まだ知らない人が苦手みたいなんだよね。色んなところに連れて行って、少しずつ人付き合いに慣れさせていかないと。 「ところで、オモチャの調子はどうだ?」 「いい感じです。さっきなんて潮まで噴いちゃって」  リョウ君が尻をつねる。余計なことは言わなくていいってことだね。でも余計なことじゃないので言っちゃう。 「そうかそうか。もし射精までさせたいんだったら、チンポ用のリモコンバイブもあるぞ。乳首用ってのもある。リモコンは同じだがチャンネルが切り替えられるから、同時にスイッチを入れることも、別々にスイッチを入れることもできるぞ」 「うーん、どうしようかなー」  リョウ君にまとめて色々着けるのも楽しそうだけど、俺にも着けてイタズラし合うのとかも楽しいかも。あ、でも俺の場合、射精とかしちゃったら大変だなあ。量が多くて。 「あと、同じくリモコン式でこんなのもあるぞ」  そう言って店主が出してきたのは……デカいディルド。いや、リモコン式なんだからただのディルドじゃなくてバイブ付きか。サイズは俺のチンポとそんなに変わらないぐらい。 「これはすげえぞ。このサイズがケツん中でとんでもなく暴れるんだ」 「だってさ。どうかな、リョウ君。気持ち良さそうじゃない?」  店主から受け取って、リョウ君に手渡す。受け取ったリョウ君は、それを握ってみたり、色んな方向から眺めてみたりして、結論を出した。 「これが振動とかするんだろ? こんなの挿れたまま歩けねえよ……」 「一回試してみろよ。本物いらなくなるぜ」 「いや……たとえ気持ち良くなくたって、俺は本物の修さんとしたいんだよ」  リョウ君のその言葉が嬉しくて、思い切り抱きしめてしまった。 「いてえよ、修さん」 「ああ、ごめん。リョウ君が可愛いからつい、ね」 「うるせえよ」  慌てて解放すると、リョウ君はぷいとそっぽを向いてしまった。バイブを店主に返すと、そのまま他の場所に移動してしまった。リョウ君の姿が見えなくなってから、店主が口を開く。 「熱いねえ。大事にしてやれよ」 「もちろん、大事にしますよ」 「よし。これは熱い二人にプレゼントだ。実はこれ、まだ正式に販売してるわけじゃなくてな。タダでやるし、後で返してくれなんて言わねえから、使った感想を教えてくれよ」 「ありがとうございます。そのうち試してみますねー」  バイブを受け取ってバッグに入れ、レジカウンターの奥に引っ込む店主にもう一度お礼を言いながら、リョウ君の姿を探す。見つけたリョウ君が見ていたのは…… 「尻尾プラグ欲しいなら買ってあげるよ。どれがいい?」 「う……じゃあ、これが」  リョウ君は尻尾付きアナルプラグの並ぶ棚からそれを見つけ出し、俺に差し出す。何の尻尾かな、と思ったら…… 「へえ、こういうのもあるんだ」  虎とライオンのハイブリッド風、と書いてあるそれは、虎のように縞模様があって、ライオンのように先端に房がある。つまり、俺の尻尾とよく似ているものだ。 「じゃあこれ、買おうか。他に買うものあるかなー」  その後はえっちな下着を物色して、リョウ君が穿いてる所を想像したり。大きいコンドームがあったので一応買っておく。ローションも補充。こんなものかなー。 代金をリョウ君に渡し、レジに行かせる。俺は少し離れたところから見守り、再び店主が出てきたところでバイブのスイッチを入れる。「んんっ……」  油断していたのかリョウ君は身体をびくんと震わせ、声まで漏らしてしまう。お金をカウンターに置いてから、振り返って俺を恨めしそうに見る。事情を察している店主は、にやにやとやらしい笑みを浮かべてリョウ君を見ながら、不自然にゆっくりと作業する。  リョウ君は商品とお釣りを回収し、急いで戻ってくると、早く止めて、などと小声で言ってくる。仕方なくスイッチを切ってやると、むすっとした顔で荷物とお釣りを突き出した。店を出てから、ぼそりと。 「油断してた……また漏らすところだった……」 「あはは。ごめんね。でもリモバイ散歩って言ったらこれが定番かなあ、って思って」 「そうなのか?」  そこから他愛のない話をしながら、次の目的地に向かう。また時々スイッチを入れたりしながら。 「アロマッスル……変な名前の店だな」 「美味しいコーヒーとアスリート応援のプロテイン系メニューが抱負なんだよ。だからアロマとマッスルでアロマッスル」  お店に入ると、野太い声が出迎えてくれる。 「おう、いらっしゃい」  その声と恐い顔に、リョウ君がびくんと震える。初めてだとみんな結構こんな感じなんだよね。良いお店なんだけど、店主の甲田(コウダ)さんの顔が恐くて。元格闘家で、今もちゃんと鍛えてるから顔以外の威圧感も凄い。  更に、この店には格闘技やプロレスの選手・関係者が結構来るので、全体的に暑苦しい感じ。だから好きな人以外は結構あんまり寄りつかないみたい。  カウンター席に着き、メニューを手に取る。 「オリジナル二つと……少しおなか減ったから、何か食べるものもらおうかな。リョウ君は何か食べたいものある?」 「……この、プロテインケーキって何なんだ?」 「それはアスリート応援メニューの一つで、プロテインを使ったお菓子だよ。結構美味しいけど、プロテインとか必要ない人は普通のケーキでいいと思うよ」 「ああ、そういうやつなのか……」  納得すると、リョウ君はメニューを見て考え込んでしまった。俺はどうしようかなあ。 「今日はパンプキンパイがオススメだぞ。ケーキ屋に頼んだやつだからうまいぞー」  店主がそう薦めてくる。ここもハロウィンはパンプキンかー。 「じゃあ……俺、それで」 「俺もそれにしようかなあ。じゃあ改めて、オリジナルブレンド二つと、パンプキンパイ二つ、あとBLTサンドね」 「はいよ」  注文すると、甲田さんともう一人、無口で身体の大きい店員さん二人がかりで料理とコーヒーを準備する。待っている間、知ってる人はいるかなあ、と店内を見回そうとすると…… 「坊主、我の顔に何か付いているのか?」  隣に座っていたお客さんに、リョウ君が話しかけられた。悪鬼羅刹と書かれた黒いジャンパーを着て、恐いデザインの覆面を被っている。プロレスラーの悪鬼羅(アキラ)さんだ。 「い、いえ、そんな……」 「こんばんはー、悪鬼羅様。この子は俺のだから、食べないで下さいね」 「む、貴様の連れか。ならば自己紹介をせねばなるまい」  悪鬼羅さんはカウンターにスペースを作り、そこにあぐらをかいて座る。 「我が名は悪鬼羅。悪鬼羅刹の最初の三文字で悪鬼羅、だ。気軽に悪鬼羅様と呼ぶのを推奨するぞ。我に喰われたいのならば、いつでも来るがいい」 「悪鬼羅様はプロレスラーだよ。レオさんと同じ団体の人ね」  ちなみにレスリング・ビーストという団体だ。この団体は動物がモチーフだったり、悪鬼羅さんのように鬼や怪物がモチーフだったりする覆面レスラーも結構多い。素顔のままの人もいっぱいいるけどね。 「おい、悪鬼羅様。カウンターに座るのはやめてくれって言ってるだろ」 「うむ、済まん」  大人しく降りる悪鬼羅さん。格好良いけどなんか変な人だ。この姿じゃない時のアキラさんも知ってるけど、キャラが違いすぎてびっくりする。本当に鬼に取り憑かれてるんじゃないかってぐらい。  悪鬼羅さんと少し話をする。こっちの姿で来るのは珍しいなあ、と思ったら、さっきまでテレビの撮影だったんだって。そのまま悪鬼羅としてこの店に寄った、と言うことらしい。 「ところで貴様、それは何だ?」  悪鬼羅さんは、俺がテーブルに置いたリモコンを奪い取る。分からないっぽく振る舞ってるけど、何なのかは分かってると思う。リョウ君が身構えていると、案の定そのスイッチを入れた。しかも一気に最強に。リョウ君は警戒していたので声を出さずに済んだが、代わりに違うところから声が上がった。 「んんああっ!」  悪鬼羅さんの向こうで声を上げたのは……リョウ君の友人のキョウスケ君だった。どうやら同じタイプのリモコン式のオモチャを使っていて、電波のチャンネルが同じだったから反応してしまったみたい。その向こうでにやにやしてるのは、最近キョウスケ君とつきあい始めた裕さん。 「おう、お前らも来てたのか。奇遇だな」 「こんばんは、裕さん」  なんてのんきに挨拶を交わす横で、キョウスケ君が身をよじって刺激に耐えている。 「うう、早く止めてくれ……」 「ああ、ごめんごめん。まさか同じの使ってると思ってなかったからさ」  悪鬼羅さんからリモコンを取り返し、スイッチを切ってやると、リョウ君とキョウスケ君はぐったりとした様子でカウンターに突っ伏す。 「びっくりだな。こっちは亀頭にかぶせるタイプなんだが、そっちはケツに挿れるプラグか?」 「当たりー」 「お前らなあ。店の中であんまり変な事するなよな」 「はーい。気を付けまーす」  甲田さんに怒られちゃった。でも甲田さんもこういうの好きそうだよね。  その後、出てきたサンドイッチを食べていたら、リョウ君が俺の耳元にぼそりと。 「なあ……俺、もう修さんのが欲しくてたまんねえよ……オモチャだけじゃ満足できねえ……」  なんて言ってくる。可愛いなあ。さっきは潮まで噴いちゃったのにね。  しょうがないなあ。パンプキンパイ食べたらもう帰るかー。 「ここ、修さんの部屋なのか……」 「こっちの方が近かったからね。俺も我慢できなくなっちゃったからさ」  リョウ君を連れてきたのは俺が住んでるマンション。特別広くもないけど、狭くはないと思う。気持ちに余裕があるときだったら色々話でもしてから……なんだけど、我慢できないからもう寝室のベッドの上。リョウ君は潮噴いちゃうからバスタオルは敷いてある。 「ほら、パンツべっちょべちょになっちゃった」  ズボンを脱ぎ、パンツをめくると先走りで大変なことになっていた。そこにリョウ君はそこに顔を近付け、臭いを少し嗅いでから舌を伸ばす。こびりついた先走りをぺろりと舐めてから、ガチガチのチンポをかぷりとくわえる。 「んん、うめえ……修さんのチンポ……」  少し味わってから、一旦口を離す。俺の服を全て脱がせて、自分はパンツ一枚に。バイブのリモコンを俺に手渡してから、しゃぶるのを再開する。  バイブのスイッチを入れてやると、腰をくねらせながらも口が休むことはなく、夢中でしゃぶり続ける。リョウ君はしゃぶるのが好きで、しゃぶってるだけでチンポは勃起して、先走りも出てきてしまう。そして今はそれに加えてバイブの刺激があるから、かぶせられたコンドームの中では凄いことになってるんじゃないかと思う。 「リョウ君、気持ちいいよ……もう、我慢できないよ。リョウ君のお尻に挿れてもいい?」 「ん、ああ、欲しい。修さんのチンポ突っ込んで掻き回されたい。本物のチンポで……」  リョウ君は口を離すと、パンツを脱いで仰向けに転がる。スイッチを切ってからプラグ型のバイブを抜いてやる。コンドームも外してから、両脚を抱えて広げる。 「じゃあ、もう挿れちゃっていいかな」 「ああ、早く、欲しい……」  俺は自分のチンポにローションをまぶしてから、リョウ君のお尻に触れさせる。少し開いた入り口に押し込んでいくと、リョウ君は目をぎゅっと閉じて最初の圧迫感に耐える。でもすぐに慣れて、表情で俺に何かを求める。  リョウ君にキスをして、その口に舌をねじ込む。リョウ君は俺に抱きつき、自分から腰を動かす。今日は俺の方がもたないかも。  しばらくそのまま俺も腰をぐりぐりと動かしていたら、リョウ君はもうチンポから透明な液体を漏らし始める。すっかり俺のチンポに慣れたリョウ君のお尻は、俺のチンポを包み込んで締め上げる。あっという間に搾り出されちゃいそうだ。 「ぷは。リョウ君、また漏らしちゃってるね」 「ああ、仕方ねえ、だろ……漏れちまうんだよ……」 「可愛いよ、リョウ君。違うのも漏らしちゃおうよ。俺もリョウ君の中に出しちゃうからさ。ああ……とりあえず一発目、いいよね?」  俺は腰を前後に激しく動かし、快感をむさぼる。いつもはもっと優しくしようと努力してるんだけど、今日は俺の方が興奮しちゃってそんな余裕がない。 「修さん……出してくれ、俺に種付けして欲しい……」 「はあ、もう駄目だ、出ちゃうよ、あああっ!」  強く突き入れ、お尻の奥で射精する。長く続く射精が終わり、一度チンポを引っこ抜く。ぽっかりと開いた穴から、ザーメンは垂れてこなかった。 「……今日の修さん、すげえ……俺も、こんなに出ちまった……」  いつの間にか、リョウ君も射精してしまっていた。リョウ君の腹から胸にかけて、潮とザーメンでべっちょりと汚れている。タオルで軽く拭ってから、リョウ君に覆い被さる。 「もう一回、いいかな? 今日は一発だけじゃ我慢できそうにないよ」 「ああ……何発でも満足するまでやってくれ……」 「ありがとう、リョウ君。じゃあ次は後ろからいこうかなー」  俺はリョウ君の身体をひっくり返した。  きりがないので三発出したところで終えて、リョウ君と二人、ベッドに寝転がる。 「リョウ君、今日はどうだった?」 「うう……聞くんじゃ、ねえよ……」  聞いたら、リョウ君がそっぽを向いてしまった。たっぷりえっちしたら、恥ずかしくなっちゃったのかな。さっきまであんなにやらしかったのにねえ。 「また今日みたいにイタズラしてもいい?」 「……好きに、したらいいだろ」 「ふふ。じゃあ好きにしちゃおうかなあ」  そんな話をしながら、ああ、ようかんをリョウ君の部屋に置きっぱなしだなあ、なんてどうでもいいことも考えたりした。  今日は楽しかったなあ。またリョウ君とデートしよう。次はいつどこに連れて行こうかなあ。