「ほう。で、どうするつもりなんだ?」 「決まってる。対決だ!」  こうなったらもうそれしかない。 「……寝言は寝て言え。お前がごときが勝てる相手じゃあないだろうが」 「やってみなけりゃわからないだろ」  社長は俺の力を信用してくれないのか。長い付き合いだというのに。 「残念ながら、世の中にはやらなくてもわかることってのがあるんだよ。それに、既にお前が負けてるだろうが」 「ぐっ……」  確かに、数字の上では向こうの方が上だ。それでも……! 「それなら、直接ならどうだ!? 直接やり合えば、技術的には俺だって……」 「直接、ねえ。本当に勝負になると思ってるのか?」 「思ってなけりゃこんなこと言わねえ! やらせてくれ!」 「ふん……まあ、いいか。ただし、向こうが受けてくれなきゃあ話にならねえぞ」  そうだ。それが問題だった。どうやって勝負を申し込む? まさかこんなこと、正式に依頼するなんて…… 「社長、ラムゼイスさんがいらっしゃってますが」  急に社員が部屋に入ってきて、社長に来客を伝える。 「ああ、丁度いい。ここに通してくれ」 「了解しました」  社長の指示で、来客がこの応接室に連れてこられた。 「あの、もう撮影はありませんよね?」  やや困ったような表情で部屋に入ってきたのは、どこか見覚えのある顔だった。ええと……ああ、ラムゼイスって確か、ここのポルノ映像に出ていたな。確か陛下が出てるのに一緒に入ってた。この黒い軍服はよく覚えてる。 「そのつもりだったんだけどな。ちょっと、頼まれてくれねえか?」 「そろそろ解放して欲しいんですが……」 「まあそう言うなって。今日はこいつのためにちょっと一肌脱いでやってくれよ」 「はあ……そちらはどういった方なんでしょうか?」  何だか二人で勝手に話が進んで、急に俺に振られた。ここに来ておいて、俺のことを知らないのか。 「仕方ない。自己紹介をしてやろう。俺は……」 「ああ、こいつの名前はゴンバクタス。帝国では一応人気トップのゲイポルノスターだ。見たことないのか? うちの雑誌にもよく出てる」  俺の言葉を遮って、社長……ゲイポルノ雑誌、『G-guys』を出してるG出版の社長、レドヴァルトが勝手に紹介してしまう。しかも本名で。普段はゴングという呼び名しか使ってないんだがなあ。 「すみません。興味がないもので存じませんでした」  ……え? 「俺のこと、見たことないのか? ゲイポルノスター・ゴングだぞ?」  ここに出入りしてるくせに、全く知らないなんてことがあるわけないよな? 「ああ、その名前には聞き覚えがあります。陛下が見ていたものに、そんな名前が出てきたような……そうでしたそうでした。ゲイポルノスター似のコンブさん」 「そっちじゃねえ!」  それはここG出版の編集者だ。俺に顔がちょっと似てるんだ。ただし体型は俺みたいなマッチョじゃなくて、ただのデブだったはず。 「おや、違いましたか。では存じませんね。陛下はコンブさんのことは可愛いと仰っていたのですが……ゴングさん、ですか? よく見るとコンブさんとは大分違いますねえ。顔の作りはそれなりに似ているようですが、本物のコンブさんの方がもう少し可愛らしい感じでしたよね。こんなに人相が悪くなかったように記憶しています」 「ぬがあああっ!」  まさか、俺の方がニセモノ扱いされるとは……しかも人相が悪い、だって? そんなこと…… 「人相が悪いとか、お前には言われたくねえぞ!」  このラムゼイスとかいう奴だって人のことは言えない顔をしてるじゃねえか。 「全体的に柔らかさの感じられないゴツゴツした顔! ぴくりとも笑わないむすっとした口元! 髪は案の定針金みたいな剛毛だし……」  ああくそ、比較的好みなのがまたムカつくぜ。このごっついマッチョな身体もうまそうだよなあ。ああ、チンポも太くてなかなか……なんて、余計なことを考えている状況じゃなかった。 「私のことはいいでしょう。あなたのように人に見られるのが仕事、というわけではありませんから」  まあ、そうか。俺はこの顔でそれなりに受けてるんだから、外野にとやかく言われようと気にすることはねえんだ。 「まあ待て、ラムちゃん。こいつにだって可愛いところはあるんだぜ?」  急に社長が口を挟んでくる。今この部屋の中ではこの人が一番人相悪いよな。世話になってるから余計なことは言わないが。 「はあ。例えば?」 「こいつはこう見えて、すげえ感じやすいんだよ。このチンピラみたいな顔が快感に歪むのがたまんねえんだぞ」 「そう言われましても……」 「ああ、実際に見た方が早いよな。おら、ゴング、脱げ!」 「うへええっ!?」  社長の手が俺の服をあっという間に脱がしていく。仕事じゃあ裸なんて見られ慣れてるのに、何となく恥ずかしくてつい股間を両手で隠す。そうすると、自然と他への防御は疎かになってしまう。結果として、俺の肥大した乳首がつねられることになった。 「んはあああっ!」  感じやすい俺は、それだけで大きな声が出てしまう。俺を弄り慣れてる社長の手つきはやらしくて、そんなつもりはなかった俺をあっという間に興奮させる。 「どうだ。すげえだろ。乳首ちょっと弄っただけでこんなやらしい表情になっちまうんだぜ。もうケツマンコは欲しがってうずいてるだろうな」 「はあ。淫乱なんですね」  ラムゼイスは俺の様子を見て眉をひそめる。俺自身には全く興味がないようで、ちょっと残念だ。あの太いチンポをぶち込まれたかったぜ。 「ほら、お前のぶっといチンポぶち込まれたいってさ。ちょっと相手してやってくれよ」  社長は俺の表情や視線で大体分かってしまうらしい。俺が単純なだけかも知れないが。とにかく、社長が何とか説得してくれたら…… 「困ります。全く興味のない相手のために勃起させるのって大変なんですよ。そろそろ勘弁して下さい」  うへえ。つまり俺は「勃起させるのも大変な、全く興味のない相手」ってことだよな……もう大体分かってたことだが、結構ショックだ。 「私にも色々とやらなければならない仕事があるんです。そろそろ失礼します」 「なあ、頼むよ。こいつは絶対お前のこと好みだから、ちょっとつついてやればすぐ済むからよう。ほら、これやるからさ」  冷たく立ち去ろうとするラムゼイスの行く手を社長が遮る。そして、何かを手渡した。何かの写真か何かっぽいな。 「引き受けましょう。このコンブさん……じゃない方の人が満足すれば帰っていいんですよね?」 「おう。頼むぞー」  うおお、何を渡したんだか知らないが、写真一枚でこんなに態度が変わるとは。しかしこれで、ラムゼイスの太いチンポをぶち込んでもらえるんだよな。社長、ありがたいぜ。 「私もそんなに時間の余裕があるわけではありませんから、手短にいきますよ。あなたが満足したら終わりですから、ちゃんと言って下さいね」  連れてこられたのは空いてた撮影用の部屋。ベッドの上で四つん這いにさせられ、社長が用意したローションをつけた指でケツ穴をまさぐられる。慣れている俺のケツは、ラムゼイスの太い指も簡単に呑み込んでしまう。 「慣れているんですね。私のも問題なく入りそうで助かります」  そんなことを言いながら、指でぐりぐりと穴を広げていく。それが気持ち良くて、またとんでもない声が出てしまいそうになる。まだ我慢だ。  やがて指が二本に増え、ぐちゃぐちゃと湿っぽい音を立てて俺のケツマンコが掻き回され、ほぐされていく。広げられる感触も、前立腺を刺激される感覚もたまらない。俺は手近にあったクッションに顔を埋めて、快感に耐えた。  しばらくして、ラムゼイスの責めが止まる。ついに……と思ったら違った。さりげなく部屋の隅でカメラを構えている社長に声を掛けていた。 「あの、社長……」 「ん、どうした?」 「シーツがびしょびしょになってしまったんですが……」 「どれ、ちょっと見せてみろ」  社長が近付いてきて、俺の身体をひっくり返す。シーツは寝小便でもしたみたいにびしょ濡れで、その水分がどこから出てきたかなんて明白だった……もちろん、俺の噴いた潮のせいだ。うう、声なんて出さなくても感じてるってバレバレじゃねえか。 「こりゃいつものことだ。シーツもマットレスも後で綺麗にするから、今は我慢してくれ。とりあえずほら、このタオルでも敷いといてくれ」 「はあ」  ラムゼイスは大きなタオルを受け取り、潮染みの上に敷く。その上に今度は仰向けのまま俺の身体を寝かせてから、自分も服を脱いでいった。  全裸になったラムゼイスは……やっぱり俺の好みだ。背が高くて、横幅も厚みもある硬そうなマッチョ体型。俺だって鍛えてるから身体にはそれなりに自信があるが、こんな岩みたいな身体を前にすると見劣りしてしまう。股の間にぶら下がっているものは……残念ながらまだ勃起はしていない。 「少し待っていて下さい。準備しますから」  ラムゼイスは一度目を閉じた。しばらく待っていると、触れてもいないラムゼイスのチンポがぐんぐんと勃ち上がってきた。長さはそこまででもないが、とにかく太いあのチンポだ。これで広げられるのか……たまんねえな。 「ではいきますよ」  目を開けたラムゼイスが、俺の両脚を持ち上げて広げ、ぱっくりと開いたそこにローションをとろとろと垂らす。そして、あの太いチンポを押し込んできた。 「んんっ……」  この太さはやっぱりきつい。でも、とりあえず亀頭まで入ってしまえばあとはすんなりと入ってきた。まあ、今まで経験の無かったサイズじゃあないからな。この太さでケツマンコを広げられるのがたまらない。まだ動いていなくても、何かが押し出されてしまいそうだ。  太いせいでやや短めに見えてしまうが、長さだって充分にある。デカい亀頭で身体の奥をこじ開けられ、俺はもう何も考えられなくなっていた。 「大丈夫ですか?」 「ああ……大丈夫だから、俺をぶっ壊しちまってくれ!」  俺を心配するラムゼイスの気遣いに対し、俺の口からはそんな言葉が勝手に出てくる。もうラムゼイスの表情なんて見ている余裕はないが、きっと困った顔でもしてるんじゃないだろうか。 「わかりました。ではもう少し、手荒にいきましょうか」  奥までねじ込まれていたチンポが、一旦全て引き抜かれる。ラムゼイスは一呼吸置いてから位置を調節し、一気に奥まで貫いてきた。 「んがああああっ!」  その強い衝撃で、俺は一瞬意識が飛んでしまったようだ。俺の身体はいつの間にかまた噴きだしていた自分の汁にまみれていて、下に敷いたタオルももうぐしょぐしょで気持ちが悪かった。それでも、ラムゼイスは止まらない。ギリギリまで抜いてから一気に突き込み、奥をぐりぐりと掻き回す。  俺はもう声も出なくなって、ラムゼイスの激しくも丁寧な責めを受け続けた。途中、何度か意識が飛んでいたと思う。いつまでも終わらないそれを止めたのは、横でずっと見ていた社長だった。 「なあ、そろそろ止めないと、いくらゴングでも干涸らびちまうぞ」 「はあ。この人が満足したと言ってくれないので仕方なく続けているんですが……」  うへえ。こいつ、俺が自分の口から「満足した」と言うまで続けるつもりだったのかよ……仕方なくそう口にしようとしたが、声が出ない。そんな元気ももうなかった。水分を出し切ったので、喉もカラカラだ。なんとか起き上がって、手で制止の意を示すことでやっと責めは止まった。 「ラムちゃんよ、この間の撮影とは違うんだから、そんなに長く掘り続けなくていいんだぞ。あれだけ汁漏らしてるんだから、満足したって分かるだろ?」 「この人の場合、初めからずっと水分を漏らしすぎでわかりにくいんですよ。いつもこんな感じなんですか?」 「まあな。我慢しようと思えば我慢もできるみたいだが、一度漏らし始めるともう駄目だな」  社長がラムゼイスとそんな話をしている間、俺はボトル入りのドリンクを一気に飲み干した。俺は我慢しなければいつも潮を大量に噴くんだが、今日は特別だな。社長が止めてくれなければ、本当に危なかったかも知れない。俺は二本目のドリンクをちびちびと飲みながら、二人の会話に耳を傾けた。 「で、どうだった? チンピラ顔が快感でぶっ壊れるのって、興奮しねえか?」 「よく分かりませんでした。特に興味のない人の顔が変化したところで、特に何も」 「わはは。興味ねえってよ。残念だったな、ゴング」  笑いながら俺の頭をぺしぺしと叩く社長。長い付き合いだから、ラムゼイスが俺の好みだなんてことは分かっているのだ。だからこそ、こんなお膳立てをしてくれたんだろうが……そこから先に発展したことはない。 「では私はそろそろ帰ります」  いつもの軍服を着込んで部屋を出て行こうとするラムゼイスに、社長は手を振って声を掛けた。 「おう。試合のこと陛下によろしくなー」  試合? 「はい。話はしておきます。陛下のことですから、面白がって受けてしまうんでしょうね……」  ラムゼイスが出て行ってから、すぐに社長に尋ねた。もしかして…… 「試合って、誰が何の試合に出るんだ?」 「そりゃあもちろん、ガルヴェイス陛下とお前が、オーガファイトに出るんだよ。ま、勝てる見込みなんて微塵もないだろうがな」  オーガファイト。格闘技で打ち負かし、相手をセックスでイかせる究極の競技だ。幸い俺はどちらにも自信がある! 俺の実力を改めて見せつけてやる!  打倒、ガルヴェイス陛下! 「お前か。俺に挑戦したいってのは」 「……はい」  どうしてこうなったのか、俺は謁見室で跪いていた。顔を上げると正面にはしっかりとした作りの玉座があって、そこにだるそうに座っているのはもちろんガルヴェイス・カイルザード陛下だ。  ラムゼイスに引けを取らない逞しい肉体は深緑色のTシャツをぴちぴちに押し上げ、年季の入った軍服のズボンに包まれた丸太のような脚は大きく開かれ、俺の視線を誘導する。そんな俺の様子を見て、髭をたくわえた精悍な顔に笑みが浮かぶ。 「オーガファイトで挑戦するつもりなんだよな? 俺に勝つなら、まず格闘で俺を倒せなきゃならねえんだぞ。その自信があるのか?」 「……あったんです、さっきまでは」  ここに来るまでは勝つ気でいたのに、いざ陛下本人を目の前にしたら……考えの甘さに気付かされた。その存在感というか威圧感というか、そんな感じのものに圧倒されてしまった。戦ったとしても、俺は自分の実力を発揮できずに負けてしまうだろう。  そもそも陛下はオーガファイトにおいて、基本的に無敗の帝王だ。専門でやってるわけでもない俺が敵う相手じゃあないんだよな。 「じゃあ、止めるか? 何もしないでお前が帰るなら、俺としては楽でいいんだがな」  でも、このまま何もせず帰るなんてことはしたくない。 「……俺に勝てる見込みがなくても試合をしたいです!」 「そんなに俺にザーメン絞られたいか?」 「はい!」  あ、しまった。つい本音が。 「わはは。素直に吐きやがったな。じゃあやるか。別に本式の試合じゃなくていいよな? 軽く格闘技の手合わせして、勝った方が相手を好きなようにしていい。それでどうだ?」 「はい、それでお願いします!」  そんなわけで、俺が連れてこられたのは板張りの広々とした部屋。片隅にトレーニング用の器具があったり、試合用のマットがある一角なんかも。つまりはトレーニング用の部屋ってことなんだろう。 「お前は組み技主体だっけか。関節技とか得意だったよな? で、ボトムマウンターだったか」 「ど、どうしてそんなことを……」  俺が時々オーガファイトに出るときは、大抵間接極めてダウンを取り、そこからボトムマウント……ウケでイかせるという流れだ。そんなことまで知ってるとは…… 「そりゃあ、俺はオーガファイト関連の仕事もしてるからな、趣味で。注目選手のことぐらいは覚えてるさ。で、確かお前は、本業が別にあるんだったよな? なんだっけ?」  むはあっ……どうしてそこは覚えていないんだ……陛下はG-guysを定期購読してるって聞いてたのに…… 「あの、俺……ゲイポルノスターやってまして……ゴングって名前、知りませんか?」  俺の弱気な自己紹介に、陛下は腕組みして首をひねる。しばらくして、思い出したのか手をぽんと打つ。 「ああ、あのポルノスター似の編集者、コンブたん似のあいつか!」  うああ、本当にそっちの方が好きなのか……何かすげえショックだ。 「あの、それは俺の方が本家で、コンブの奴が俺に似てるっていうアレで……」 「可愛いよなー、あいつ。どうせならあっち連れてきて欲しかったぜ。撮影の時とか会えるかなー、とか思ってたんだが、大抵別の撮影に行っるんだよなあ。それ、もしかしていつもお前の撮影なのか?」 「はあ……確かに、俺の撮影に来ることは多いですね」 「ふむ。つまり俺のコンブたんは、お前が独り占めしてたってことだな? これは許せんなあ」  陛下は俺に背を向けてマットの中央へと向かう。慌てて後に続き、陛下と向かい合って立つ。陛下は俺の姿を上から下まで舐めるように見て、疑問をぶつけてくる。 「その格好で戦うのか? ヤる方はそれでもいいだろうが、動きにくいだろ」  そう言えば俺は、ビジネススーツ姿だった。コスプレセックス用に一回だけ使って、洗いに出していたものだ。もちろん普段着ることはないが、何故か謁見室で陛下と会うことになってしまったため、慌てて引っ張り出してきたのだ。  確かにこの姿では、運動には向かない。対する陛下は動きやすくできている軍服のズボンにTシャツだ。タダでさえ勝てる気がしないのに、更に不利な条件を背負ってまともに戦えるわけがないよな。 「すみません、着替えてきます!」  マットを降りようとすると、そこに丁度ラムゼイスが入ってきた。手には何やら大きな袋を持っている。 「着替えならありますよ。トレーニングウェアもありますが、ショートタイツの方がよろしいですか?」 「よし、俺が選んでやろう。で、この場でささっと着替えちまえ。どうせ後で脱ぐんだから、恥ずかしいこともないだろ?」  陛下はラムゼイスから袋を受け取り、中身をマットの上にぶちまける。全て衣類だ。トレーニングウェアもあれば、オーガファイトの試合用のタイツやトランクスなんかもある。その中から陛下が選んだのは…… 「お前にはやっぱりこれだろ」  手渡されたのは……赤い紐のようなもの。ものすごく見覚えがあるぞ。受け取って広げてみると、申し訳程度に小さな布がついていた。 「あの時の奇跡を見せてくれ」  奇跡。確かにあれは奇跡だったかも知れない……この小さな布の中に俺のそれなりにデカいチンポが収まったのは。グラップルラウンド……格闘中にははみ出ることはなかったからな。 「本当に、これで?」 「そうだ。ほら、俺も忙しいんだから、早くしろ」  うう……仕方ないか。ジャケットを脱いで、ネクタイを外す。シャツのボタンを外し、脱ぎ捨てる。ズボンのベルトを外している途中、視線に気付いた。すげえ見られてる…… 「こういうのいいよな。やっぱりお前、ポルノスターなんだな。なんか、普通に脱いでるだけでエロいぞ」 「うう、そんなつもり、ないんですが……」  俺、やっぱり身体に染みついてるんだよなあ。どこかで見せ方を意識したような仕草になってしまうらしい。急に恥ずかしくなってしまったので、陛下に背を向けてからタンクトップを脱ぎ、派手な柄のTバック一枚に。 「うーん。雑誌やら映像やらで見てたときはそこまでいいとは思わなかったが、実物は……なかなかいいな。触りたくなるケツだ」 「陛下、手つきがはしたないですよ」  ちらりと後ろを見てみると、陛下は俺の尻に向けて腕を伸ばし、ケツタブを撫で回す仕草をしていた。それを見たラムゼイスが不快そうに眉をひそめているのも目に入った。 「とか言って、お前もアッシュが目の前で尻突き出してたらこう、したくなるだろ」 「はあ、それは確かに……」  うわ、納得してる。想像してるのか、目を閉じて手を突き出したりしている。アッシュって……アシュレム殿下のことか。陛下の一人息子の。そうか、ラムゼイスはそういうのが好みだったのか……俺とは正反対だなあ。残念。  とりあえず後ろのことを気にするのは後にして、Tバックを脱ぐ。さっきの紐みたいなやつを広げて、仕方なく脚を通す。小さい布に半勃ちのチンポを無理矢理押し込み、何とか正面からは見えないようにする。それから意を決して、陛下の方に向き直った。 「これで、いいですか?」 「ん? おお、イイな。その窮屈そうなのがたまらん。よく収まってるよなあ」  陛下が顔を近付けて、正面だけでなく横から、上、下からも観察する。そんなにやらしい目で見られたら……興奮してしまう。半勃ちぐらいだったチンポは更に膨張し、小さな布を窮屈そうに押し上げる。 「おおお、これがあの奇跡の収納! 実に見事だ」  興奮した様子の陛下は、我慢できなかったのか正面から布越しの亀頭をちょんと突いた。そのわずかな衝撃で、奇跡的に収まっていたチンポがぶるんと飛び出てしまう。一度こうなってしまうと、再び収納するのはなかなか大変だ…… 「いやあ、しまった。頭では分かってたんだけどよ。つい、な」 「はあ、気持ちは分かります、けど……」 「お詫びに、先に一発抜いてやろうか? 勃ったままじゃ動きにくいだろ」 「いえ、大丈夫です」  俺は意識して身体の血流を操作した。とは言っても、できるのは勃起を調節することだけだ。ポルノ関連の仕事を重ねるうちに、必要にかられてできるようになってしまった特技だ。平常時まで萎んだところで、小さな布に再び収める。これでよし、と。 「便利だな」 「でも、気を抜くとすぐにこうです」  安心した途端、集中が途切れて再び勃起してきてしまう。布を押し上げ、またあの奇跡の収納の状態に。まあ、これでいいか。どうせ試合の時は、俺はいつも勃起したままなんだから、あまり変わらないよな。 「じゃあ、始めるか。本気でやり合ったら後でセックスどころじゃないから、その辺は気をつけようぜ」 「わかりました」  一つ深呼吸してから、脚を開き、腰を少し落とした構えを取る。対する陛下は……構えもせず、腕組みをして立っている。にやにやと笑みを浮かべて、指でちょいちょいと手招きする。 「来いよ」  来い、と言われればこちらから行くしかない。だが正面から突っ込んでいって、そう簡単にいくわけがない。試合の時ならリングにはロープやポールがあるが、ここにそんなものはない。こういう時は……  俺は正面に向かって走った。陛下の目の前で高く跳び上がり、頭の上を越えて背後に回る……! 「ほいっ、と」  つもりだったのに、いつの間にか俺はマットに組み伏せられていて、押さえつけられた手脚は動かすことができなかった。 「どうだ。もうギブアップするか?」 「くうっ……まだまだ!」  などと強がっても、ここから返せる気がしない。だがこんなに早く負けを認めるのが悔しくて、わずかに動く部分をじりじりと動かして、無意味な抵抗などしてみる。 「ふうむ。じゃあ、お前に有効な必殺技で負けを認めさせよう」  陛下が俺の身体の上に腰を下ろした。胸の上あたりに、俺の頭の方に正面を向けて。豪快に開いた両脚で、俺の頭を挟み込む。陛下の股間に顔を埋めた状態になり、俺はもう何も考えられなくなる。両脚が拘束から解放されたのに、もはや抵抗する気もなくなってしまっていた。  視界は塞がれているが、顔に当たる硬い膨らみは存在感と匂いを放っている。ああ、これが欲しい…… 「どうだ。今度こそギブアップするか?」 「むぐう……」 「この先が欲しかったら、負けを認めろ」  ああ、この先も欲しいけどこのままの状態も捨てがたい……ああ、俺はどうすれば!  とりあえずしばらくはこのままでいようと息苦しさに耐えていたが、先に陛下の方が焦れったくなってしまったようだ。 「なあ、お前もう戦う気ないだろ。このまま先にイかされた方が負けの勝負に移るぞ」  ああ、陛下の股間のモッコリが離れていってしまった……それを目で追いながら呼吸を整えていたら、白い何かが陛下の手から伸びて、俺の手脚に絡みついた。 「な、何ですか、これ!?」  それは器用に動き、俺は膝を曲げた状態で手脚を拘束されてしまった。よく見ると、それは白く細長い布のようだった。少し汚れてるかな。 「これは特殊な繊維でできていてな。魔力を通すと自由に動かせるんだ」 「へええ……」 「誰かを拘束する必要があるときなんかに使うために、いつも身につけてるんだぞ」 「はあ」 「褌としてな」 「はああっ!?」  つ、つまりこのシミはもしかして陛下の我慢汁とかだったりするのかも知れない……! 匂いを嗅ぎたい! でも拘束されていると鼻が届かない! くぬううっ…… 「さて、ルールを決めよう。お前が先にイったら……そうだな。お前とコンブたんと3Pをセッティングしろ」 「はあ。それぐらいなら何とか……」  コンブの奴だって、陛下のことが嫌いなわけがないんだ。話を持ちかければあっさり引き受けるだろう。俺にとって全くデメリットがないけどいいんだろうか。 「で、お前が勝ったら……どうする? できる範囲でならお前の頼みを聞いてやるぞ」  むむ、そう言われても……そうだなあ。 「じゃあ、俺が勝ったら……それにラムゼイスも加えて4P、とか……」 「む、俺もそっちの方がいいぞ。他のにしろ」 「そう言われましても……そんなすぐに思いつきませんよう」 「むう、仕方ない。そう言う話はまた後だ。先にヤっちまおう」  陛下は自分の服を脱いでいく。Tシャツを脱ぎ捨て、ズボンのベルトを外す。その中からは、下着を着けていないむき出しのチンポ飛び出てきた。もちろん、既にギンギンに勃起している。ああ、そうか。下着は今俺の手脚を縛ってるやつなんだな。 「陛下、早め済ませて下さいね。この後も予定が詰まっているんですから」 「おう。分かってる」  陛下の脱いだ服を丁寧に畳みながらラムゼイスが注意する。もしかして陛下への言葉のフリをした、俺への忠告なんじゃないだろうか。俺がイってしまえば勝負は終わるんだから。ラムゼイスは更に荷物の中から出したボトルを陛下に手渡す。ローションか何かだな。  陛下がローションを自分の手に垂らし、俺のケツに塗りたくる前に快感に抵抗することを意識する。初めから我慢するつもりでいれば、耐えるのは得意だ。だから、陛下の指が俺のケツを掻き回し始めたときも、声を出さずにいた。 「さすがだな。指はするっと入るんだが、一度入っちまうと放そうとしねえ。おお、すげえ締まるぞ……」  陛下は俺のケツの中で指をぐちゃぐちゃと動かし、中から入り口をこじ開けるようにゆっくりと指を抜いていく。そして指を増やしてまた奥まで。太い指は一本増えるだけでも全然違う。三本入ると少しきつさを感じる。でも、それがまたたまらなく……なんて考えないようにしないとな。 「さて、あんまりゆっくりやってるとラムが怒るから、てきぱきと行くぞ」  指が全て引き抜かれ、陛下が移動する。陛下の形の良い巨根が俺の目の前まで近付いてくる。それを味わいたくて舌を伸ばすが、触れる直前に離れてしまった。 「よし、もう挿れるぞ」  うう、今のプロセスは必要だったのかよう……なんて俺の心の叫びは届くわけがなく、陛下は再び俺のケツの側に移動する。俺のケツを少し持ち上げて、自分のチンポを肛門にあてがう。そして、ついにそれがずぶりとねじ込まれた。 「おお……さすがはポルノスターのケツマンコだな。勝手に呑み込んでくぞ。ほら、もう根元まで入っちまった。すげえ絡みついてくるぜ」  身体の奥まで貫かれたような感触。俺はその快感に耐えながら、陛下のチンポを絞り上げることに意識を向ける。腰をくねらせながら、中で陛下のチンポを締め上げたりゆるめたり。大抵はこれで、俺が我慢できなくなる前にイってくれるんだが……やはり陛下はしぶとい。  陛下は俺をじっと見つめ、俺を突き上げる。身体の奥をえぐられると、何かが押し出されてしまいそうになる。これで少し漏れたところで、オーガファイトの試合ならイったことにはならない。今回のこれも、それに合わせてくれると思う。でないと、ケツを突かれるとすぐにザーメンやら潮やらを大量にぶちまけてしまう俺の方が圧倒的に不利だからな。 「なかなかやるな。だが今日は、本当に急いでるんでな。手加減はしねえぞ。覚悟しろよ」  陛下がそう言って、にいっと笑う。そして、陛下の動きが激しくなった。奥をえぐり、掻き回しながら引き抜いていき、しっかりと前立腺を突き上げる。抜ける直前に止まり、また一気に突き込んでくる。もう、すぐに終わらせる気だ。 「んぐうっ……」  俺もしばらくはその責めに耐えていたが、限界は思いのほか早く訪れた。その時が来ると、俺はだらしなく口を開き、言葉にならない声を上げるだけだった。 「んがああ、あはあああっ!」 「その顔、たまんねえな。お前が人気ポルノスターなのも分かる気がするぜ」  陛下は俺の顔を両手で包み込み、口を少し閉じさせる。そしてそこに、口付けてきた。 「んんんっ!」  そのキスは俺の理性を吹っ飛ばした。我に返ると、俺は陛下にしがみついて大量に汁をぶちまけていた。二人の腹がべちょべちょに汚れている。 「へへ、俺の価値だな。でも今日は、俺ももう我慢できねえ……お前のケツの中に出すぞ!」  陛下が咆哮を上げて、動きを止める。そのまま俺に覆い被さってきて、俺はしばらく幸せな息苦しさを味わった。  ああ、こんなにもあっさりと負けてしまった。だが、これで良かったんだろう。そもそもライバル視したのが間違いだったんだ。 「陛下ぁ……」 「お、やっべえ。そろそろ時間だ。ラム、後片付けしといてくれ」  陛下の身体がさっと離れる。ラムゼイスから受け取ったタオルで身体を軽く拭いてから、褌を回収。服を着てすぐに部屋を出て行った。うう、この温度差……まあ、陛下にとっては俺なんて、沢山いる中の一人なんだろうなあ。それは仕方ない。俺だって陛下を独り占めしようなんてことは考えないさ。 「ゴングさん」  俺にもタオルを差し出しながら、ラムゼイスが話しかけてきた。 「陛下はいつもより興奮していたようですよ。いつもはこちらが急いでと言ってもこんなに早く終わりませんから」 「え、それって……」 「いい勝負だったと思います。あくまで後半の勝負に関してのみですが」  うおお、何だかちょっと自信が湧いてきたぞ。最初は興味なさそうだった陛下も、ポルノスターとしての俺に興味持ってくれたみたいだし……勝負には負けたが、ここに来て良かった。  さあ、負けた俺はコンブとの3Pをセッティングしないとな。ああ、ラムゼイスも加えて4Pだったか? 「ところでゴングさん……私は4Pに参加しませんからね」 「うええっ、そんな!」  でも、勝った陛下の要望だから、参加してもらわないと……そうだ、ラムゼイスに勝負を挑んで…… 「あ、ちなみに。私に勝負を挑んでも無駄ですから。どちらでもあなたでは勝てませんよ」 「うぬうううっ!」  冷静に考えてみればそうだ。ラムゼイスが着ているのは黒軍服だ。黒軍服は皇族に仕える特別な軍人だから、格闘で敵うわけがない。それにラムゼイスに掘られたときは感じている様子もなかったし、それどころか興奮すらしていなかった。勝負するだけ無駄か……  と言うわけで、次の目標はラムゼイスだ! どうにかして、何らかの方法でラムゼイスを打ち負かす! そして4Pだ!  その後、何でもこなしてしまうラムゼイスに勝てそうな分野が見つからず、俺は結局社長に泣きつくのだった。